鶴岡大使の中学生へのメッセージ

ロンドン日本大使

 認定NPO「知多から世界へ」は、2015年から知多地域の中学2年生の英国研修を 実施しております。

 研修場所は、英国、イングランドの西にあるシュルーズベリーという古き英国らしさを残した地方の都市ですが、2017年から3年間、ロンドンにある英国 日本大使館を訪問する機会を得ました。この時、我々の中学生を温かくお迎え頂いたのが鶴岡公二大使でした。

 鶴岡大使は、中学生に向かって4つのことを話してくださいました。 

 1つは、「日本と日本人がすばらしい国と国民であること」を世界が高く評価してくれていること。これは、我々の先輩たちが世界で日本人としてどう貢献したら良いのか、それをまじめに一つひとつ誠実に実行してきた、その評価であること。

 2 つ目は、社会に出て一番重要だと思う課題は、「平和」だということ。日本が世界から評価してもらっている根底には、日本が平和国家であること。世界と平和を創っていこうという強い意識を持っている国であるということが世界に認められているということ。

 3つ目は、「民主主義」の大切さ。民主主義が一番大切だと思うことは、それは、「一人 ひとりの人間を尊重すること」。民主主義は、一人ひとりの能力を活かすために、それぞれの人が、誰もが満足をもって社会で生きていけるようみんなで協力する制度 であるということ。

 4つ目に、「日本にはない多様性を学ぶこと」。これは、「国際性」を学ぶことにつながる。

 日本に住んでいると周りの人は、みな似たような人ばかりだが、日本以外の世界の国々は 、「多様性」に富んでいる。言い換えれば、日本以外の国は、日常生活が国際 性に富んでいる。これが世界の現状であり、これを実感して、英語を身に着け、日本を世界に発信してもらいたい。と締めくくりました。これをロンドンの日本大使館で、大使から直接聞いた生徒たちは、それぞれに深く心に刻まれ、これからのことを考えたことと思います。

 鶴岡大使は、英国駐在中の思い出として、共同通信に寄稿されたものを、中日新聞が取り上げ、2021年1月24日付けの知多版に掲載されました。これを読んだ関係各位 からたくさんのお礼のメッセージをいただきました。

ロンドン日本大使館

  NPO知多から世界へといたしましては、鶴岡大使の我々NPOが取り組む英国研修への評価と熱い思いに心から感謝申し上げますとともに、中日新聞に取り上げられました鶴岡大使の想いが広く皆様に伝わりますことを祈念いたします。

2021年1月24日 中日新聞 知多版

英国研修事業を支えて頂いた方々・・・「知多から世界へ」の期待

 市民による国際交流委員会 委員 東海旅客鉄道(株)相談役 須田 寬 氏

 私は、学生時代英語の成績が悪く、特に英会話能力は、皆無との劣等感を持っていました。そのため就職後も海外への 出張(旅行)等はすべて断り通してきました。 昭和40年代 になって、外国鉄道と当時の国鉄が協定して若手社員の交換 現地研修を行うこととなり、私に与えられたイギリス国鉄への一ケ月の出張参加命令も断ろうとしました。この折上司から 「一 度でよい から「社会人」として生きていくつもりなら「外国 とくに欧州をみておけ」君のためにも、会社のためにもなる。 これは命令 だ!」と強く指示され、止むなく参加しました。予 想(?)の如く私の英語は、全く通じませんでしたが、同行者 の会話力に助けられ何とか研修を終えました。

須田 寬 氏

 しかし、この初の外国体験は、私の人生に二度とないほどの強烈な衝撃を与えたのです。 まず、「何故こんな国と戦争をしたのだろう」という疑問でした。勝つ筈がありません。又先進国としてイギリスの姿は、TV、写真等で、見ていたつもりでしたが、実地に見るそれは、TV等のそれと違って外国人との日常のなかで接したためか全く迫力も違っていました。同じ建物をみてもそこからは、長い歴史を実感し、「駅」を見ても十数本のホームを壮大なドーム が覆う日本では、見られないような大ターミナルが、ロンドン市内に数か所もあるかと思えば、地下鉄に乗ると「19世紀」運用開始の世界最古の板張りのエスカレーターが、当時も使われている状況でありました。そして、これらの壮大な施設が、市民の日常に密着し、自然な姿で大都市の市民のくらしを支えていたのです。まさに、「百聞は、一見に如かず」生きた姿をみることが、如何に大切か又自分にとって未知だった欧州諸国の予感とは、全く異なる市民の日常が、そこにあることを知り、これまで国際交流が、如何に、日本では、不足していたかも痛感しました。「知多から・・」に参加された諸君も同じような印象を受けたられたのではないでしょうか。

 私の場合は、英語ができず、生半可な予備知識がなかったことがかえって幸いして、理 解を深められたようにさえ思います。若いうちのいわば「先見(偏見)のない時期に外国をみる」ことが、いかに大切かを痛感させられたのです。

 先見を持たずに、しかし会話等の基礎的勉強には、私(?)以上に励んで一度だけでなく、何度もこれからも訪れるつもりで行ってみてください。そうすれば外国の「光」が、諸君の心に定着すると確信します。「知多から・・」はそのような絶好の機会を若い諸君に与えてきた画期的なイベントだったと思います。

*須田氏におかれましては、2024年12月13日にご逝去されました。英国研修に対しましては、その意義について深いご理解と事業推進に対する前向きなご意見を賜りました。また、英国研修に対する評価と多大なご寄付並びに英国研修事前研修に毎度のご講演やご寄稿を頂きました。氏の英国研修事業に対する生前の真摯な対応に衷心より感謝申し上げます。

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